茶カテキンの抗肥満作用について その1

今回は、抗肥満作用すなわち脂肪に対する効果についてまとめていきたいと思います。
カテキンとは?
カテキンとは緑茶に含まれるポリフェノールで、主にエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートの4種類のことを指します。エピガロカテキンガレートについては、EGCGという呼び名で、一度は聞いたことがあるかと思います。

これら茶カテキンは緑茶中に、EGCGが約59%、エピガロカテキンが約19%、エピカテキンガレートが約14%、エピカテキンが約6%の割合で含まれています。また、エピカテキンからカテキン、エピガロカテキンからガロカテキン、エピカテキンガレートからカテキンガレート、EGCGからガロカテキンガレートが生じることも分かっています。
この中でも特に研究が進んでいるのがエピガロカテキンガレート、いわゆるEGCGです。EGCGにはアレルギー抑制作用や抗炎症作用など様々な生理活性を持つことが明らかになっています。また、2004年には九州大学の立花先生が、EGCGのがん細胞増殖抑制作用について、受容体(67kDa ラミニン受容体)の関与を報告しました (Tachibana H, et al. Struct Mol Biol11, 308-381, 2004)。
脂肪細胞とは?

コスモバイオHPより
脂肪細胞とは、細胞の中に脂肪滴を貯めている細胞です。白色脂肪細胞と呼ばれる大きな脂肪滴を1つ持つものと褐色脂肪細胞と呼ばれる多数の脂肪滴をもつものがあります。脂肪滴は左図のようにオイルレッドO染色という方法で染めることができます。
ちなみに肥満細胞と呼ばれる細胞もありますが、これは免疫系の細胞です。
脂肪細胞が貯蔵する脂肪滴は、これがあると太るんじゃ?と思いそうですが、決して悪いものではありません。エネルギーが足りないときなどに、脂肪滴が分解されることでエネルギーとなります。しかし、高カロリーな食べ物ばかり食べたり、運動不足であったりすると、脂肪細胞は段々と肥大化(脂肪滴も大きく)していき、肥大化脂肪細胞になります。肥大化脂肪細胞は、身体に良くない物質を分泌するようになり、結果、肥満や高血圧のリスクとなります。
カテキンの脂肪細胞に対する作用
さて、それではこれまでに報告があるカテキンの脂肪細胞に対する作用についてまとめていきます。
EGCGの脂肪細胞に対する作用の論文 その1
- 前脂肪細胞の増殖を抑制作用 Hung PF, et al. Am J Physiol Cell Physiol 28: C1094-1108, 2005
備考: EGCGはERK経路およびCDK2(細胞周期を進めるタンパク質)活性を抑制した。 - 前脂肪細胞のアポトーシス誘導作用 Wu BT, et al. J Agric Food Chem 53: 5695-5701, 2005
備考: EGCGはCDK2抑制によってアポトーシスを誘導した。 - レジスチン分泌の抑制作用 Liu HS, et al. Am J Physiol Endocrinol Metab 290: E273-281, 2006
備考: EGCGはERK経路を抑制することでレジスチン分泌を抑制した。 - 脂肪細胞の脂肪細胞分化の抑制作用・アポトーシス誘導作用 Lin J, et al. Obes Res 13: 982-990, 2005
- AMPK活性化を介した脂肪細胞分化抑制作用 Hwang, et al. Biochem Biophys Res Commun 338: 694-699, 2005
- 脂肪細胞分化時の脂質蓄積の抑制作用 Moon HS, et al. Obesity 15: 2571-2582, 2007
備考: EGCGの脂肪細胞分化・脂質蓄積の抑制作用には、PPARγ2-GPDH経路の抑制、ROS-AMPK経路の促進が関与した。 - 67LR受容体を介したROS誘導による抗肥満作用 Wang CT, et al. Mol Nutr Food Res 53: 349-360, 2009
備考: 脂肪細胞において、EGCGはGSHレベルを減少させることでROS産生を亢進させた。またこの作用は、EGCG受容体である67LRを介することが示された。
EGCGの脂肪細胞に対する作用については、上記のようなことが報告されています(ひとまず古いものから7報程度)。
ERK: 細胞外シグナル制御キナーゼ (extracellular signal-regulated kinase)、細胞増殖や分化を制御する因子
CDK2: サイクリン依存性キナーゼ (cyclin-dependent kinase)、細胞周期(細胞増殖)を調節する因子
アポトーシス: プログラムされた細胞死、つまり何かによって細胞が殺されるようなもの
レジスチン: 脂肪細胞が分泌する因子であり、インスリン抵抗性を亢進させるなどの作用をもつとされている
AMPK: AMP活性化タンパク質キナーゼ (AMP-activated protein kinase)、飢餓などエネルギー不足時にエネルギーを産生するのに必要な因子
ROS: 活性酸素種 (reactive oxygen species)、酸化物質として老化促進など色々と悪影響を及ぼすもの
GSH: グルタチオン、抗酸化(ROSを消去する)作用をもつ分子
まとめ・コメント

EGCGの作用のまとめ その1、は上図の通りになります。
簡単にまとめますと、
EGCGは脂肪細胞の増殖と分化を抑えることで、抗肥満作用を持つ
ということです。
EGCGによって脂肪細胞では活性酸素種(ROS)が上昇するということで、これがどのようなメリットをもっているのか、についてはまだ調べていきたいと思います(ROSは通常、悪影響を及ぼすものなので)。また肥大化脂肪細胞への作用や生体への作用についても調べてみたいです。
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