『疑似火星重力0.38Gにおけるレスベラトロール筋機能維持効果』を4コマ漫画も交えてまとめていく。

筋骨格研究
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A Moderate Daily Dose of Resveratrol Mitigates Muscle Deconditioning in a Martian Gravity Analog | 適度なレスベラトロールの摂取は疑似火星重力下における筋機能低下を和らげる

4コマ漫画でハイライト

レスベラトロールとは?

レスベラトロールはポリフェノールの1種で、ブドウの果皮などに含まれる抗酸化物質として知られています。特に2006年頃にマウスで寿命延長効果が報告され、赤ワインに含まれる長寿因子として広くニュースになったことがあります。これはサーチュイン(SIRT)と呼ばれるNAD+依存性ヒストン脱アセチル化酵素を活性化するため、だったかと思います。当時は、むしろサーチュインってすごくね?っていう感想を持った気がします。SIRT6欠損マウスが早老症を呈すること(Cell)や、SIRT6がテロメア機能維持に必須である(Nature)などの論文が印象に残っています。

これ以外に、抗炎症、抗がん、認知症予防、血糖低下、脂質代謝改善、骨粗鬆症予防など様々な効果を持つことが報告されています。

レスベラトロールは、その長寿延長効果以降に爆発的に研究が進んだように思えます。ヒトにおける試験もいくつか行われており、抗動脈硬化、抗認知症、抗肥満、抗がんなどの有用な効果を持つことが報告されています。一方で、多量に摂取すること(1日数gを毎日摂取など)による腎障害などの副作用についても報告されています。

何故、火星重力に注目したのか?

漫画などでも取り上げられることが多いと思いますが、ヒトを地球外に送る可能性がある場所として、月と火星が挙げられます。月は0.16G、火星は0.38Gとどちらも地球の重力の半分以下です。

地球より重力が減るとどうなってしまうのかといいますと、わかりやすいところでいうと骨や筋が減ります。以前の記事、こちらは微小重力(宇宙)の場合ですが、骨・筋量が著しく減ってしまいます。そして、宇宙で人工的に地球と同じ1Gを負荷しますと、骨・筋量が減らずに維持できます。

もちろんこのように運動負荷によって、微小重力でも筋・骨を維持するという試みは非常に大切です。同時に、宇宙食にも気を付けることで、より筋・骨を維持できるのではないか、ということで、本論文では食品因子であるレスベラトロールに着目しました。

また過去に、尾部懸垂モデルにおける廃用性の筋萎縮・骨粗鬆症にレスベラトロールが有効であるという論文もあるようです。ちょっとこの論文は興味深いです(2011年なので古いですが…)。

Resveratrol prevents the wasting disorders of mechanical unloading by acting as a physical exercise mimetic in the rat. - PubMed - NCBI
FASEB J. 2011 Oct;25(10):3646-60. doi: 10.1096/fj.10-177295. Epub 2011 Jun 29. Research Support, Non-U.S. Gov't

疑似火星重力(0.4G)の筋への影響

本論文でのレスベラトロール投与量: 150 mg/kg/day

体重変化
体重変化については、1G群と比べて0.4G群で有意に減少し、レスベラトロール摂取による体重への影響は認められませんでした。

前肢・後肢の握力試験
1G群と比べて、0.4G群で有意な握力の低下が認められましたが、レスベラトロール摂取によって1G群と同等レベルまで握力の改善が認められました(0.4Gにおける握力低下が予防できたということ)。

ヒラメ筋・腓腹筋の解析
1G群と比べて、0.4G群でヒラメ筋重量および筋線維径の有意な減少が認められましたが、レスベラトロール摂取によりそれら減少の緩和が見られました。

赤: コラーゲンVI 緑: 遅筋線維 青: 核

上図の参照元 (open access 論文): Fig. 2c; Mortreux M, et al. Frontiers in Physiology 10, 899, 2019.

A Moderate Daily Dose of Resveratrol Mitigates Muscle Deconditioning in a Martian Gravity Analog
While there is a relatively good understanding of the effects of microgravity on human physiology based on five decades of experience, the physiological consequ...

結論・感想

この微小重力モデルというのが新鮮でした。詳しくは調べていないのですが、著者らのグループが考案した14日間のモデルのようですね。以下がまとめです。

  • レスベラトロールの有無は、体重・食餌量に影響しない(微小重力により体重減少などは見られる)。
  • 微小重力による前後肢の握力低下が大きく改善
  • 微小重力による後肢の腓腹筋・ヒラメ筋(どちらもふくろはぎの筋肉)の筋萎縮が改善

また、作用機序として著者らは以下の考察をしています。

  • 微小重力は骨格筋のインスリン感受性を低下させるが、レスベラトロールにより骨格筋のインスリン感受性が維持された。

結構ありがちな作用機序ですが、食品因子であるため、きっとそうなのでしょう。

自分的には、筋機能(握力)がレスベラトロールによって改善するというのは分かるのですが、筋量の低下が予防されているというのが面白いと思いました。腓腹筋が、1G+レスベラトロールで有意に増加しているのが気になりますが(これが本当だったら、レスベラトロールを摂取するだけで筋肉がどんどんついていく、という可能性が示唆されてしまう)。

例えば、以前の記事を参考に、食品因子系は筋の重量にはあまり影響を与えないが、筋の機能を改善させるといった報告が多い印象です。

ともあれ、宇宙旅行などが現実になっていきそうな中、宇宙滞在での大きな問題である筋や骨の減少が、宇宙食から予防ができる、というのは非常に有用であると思いました。そして非常に多岐にわたって有効な作用を持つレスベラトロールの新たな機能性の発見は、食品因子の新たな可能性を見出してくれました。

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