破骨細胞由来アポトーシス小体が骨形成を促進する

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昨年にNatureで発表された破骨細胞からのRANKLリバースシグナリングの話はとても興味深かったですが、今月新たにそれに関する論文がJBCから出ていましたので、こちらレビューしていきます。

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Mature osteoclast-derived apoptotic bodies promote osteogenic differentiation via RANKL-mediated reverse signaling.成熟破骨細胞由来のアポトーシス小体は、RANKLリバースシグナリングを介した骨形成を促進する。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31167789

要旨

 骨リモデリングにおいて、破骨細胞は、およそ2週間の生存期間後にどの骨代謝回転サイクルにおいてもアポトーシスを起こし、多くのアポトーシス小体(apoptotic bodies; ABs) を生み出す。しかし、骨リモデリングにおける破骨細胞由来のABs (osteoclast-derived ABs; OC-ABs) についてはあまり研究されておらず不明な点が多い。本研究では、我々は骨髄マクロファージ (bone marrow macrophages; BMMs) をRANKLで刺激し、全破骨細胞 (preosteoclasts; pOCs) と成熟破骨細胞 (mature osteoclasts; mOCs) を得た。それから、pOCsおよびmOCsにアレンドロネート (ALN) を用いることでアポトーシスを誘導させ、アポトーシス小体を生み出した。抽出したアポトーシス小体は、フローサイトメトリーおよび免疫ブロット法を用いて、サイズおよび特性を検討した。我々は、mOC-ABsは前骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞により取り込まれ、MC3T3-E1細胞の生存を促進することを示した。すべての破骨細胞由来の細胞外小胞(extracellular vesicles; EVs) の中で、mOC-ABsは最も高い骨形成能を有していた。我々はさらに、破骨細胞由来EVsの中で、mOC-ABsはRANK発現量が最も高いことを発見した。特に、可溶性RANKLによりEVsのRANKをマスクすると、OC-ABsによる骨形成能が強く抑制された。メカニズムとして、我々はmOC-ABsがPI3K/AKT/mTOR/S6Kシグナル経路の活性化により骨芽細胞分化が誘導されていることを示した。結論として、OC-ABsはRANKLリバースシグナリングを介した骨芽細胞分化を誘導することで骨分化を促進する。これらの知見は、骨リモデリングにおける骨吸収と骨形成の間の移行期における重要なことであり、破骨細胞-骨芽細胞カップリングにおいてAB依存的な細胞内シグナルのメカニズムを同定した。

背景

骨リモデリング
 古い骨を破骨細胞が溶かし、骨芽細胞が新しい骨を造っていくことです。

カップリング
 破骨細胞と骨芽細胞の間のコミュニケーションのことをいいます。つまり、破骨細胞が分泌する何かの因子が骨芽細胞に骨を造るように指示したり、または骨芽細胞が分泌する何かの因子が破骨細胞にもっと骨を溶かしてと指示したり、などです。
 もちろん他の細胞、例えばT細胞やマクロファージ、骨細胞などが入ってくることもあります。
このカップリングによる骨代謝の制御については、昔からよく研究されています。骨芽細胞から破骨細胞へのカップリング因子と比べて、破骨細胞から骨芽細胞へのカップリング因子というのはあまり明らかになっていません。

RANKとRANKL
 RANK (receptor activator of nuclear factor κB) とRANKL (RANK ligand) は破骨細胞の分化に必須の因子です。骨芽細胞がRANKLを膜上に発現または可溶性RANKLを分泌し、破骨細胞前駆細胞(マクロファージなど)が発現しているRANKと相互作用することで、破骨細胞前駆細胞が破骨細胞へと分化していきます。

破骨細胞の寿命
 破骨細胞は、~数百もの破骨細胞前駆細胞が融合・分化して形成される多核の巨細胞です。その寿命は非常に短く、ヒト破骨細胞はおよそ2週間です(骨芽細胞は3ヶ月程度です)。もちろん、細胞分裂によって数を増やすということはできません。破骨細胞は寿命を迎えると、アポトーシスと呼ばれるプログラムされた細胞死を引き起こし、最終的に破骨細胞そのものはアポトーシス小体 (apoptotic bodies; ABs) と呼ばれる細胞膜に囲われた小胞に分かれ、マクロファージなど貪食細胞により処理されていきます。

アポトーシス小体
 アポトーシス細胞から産生される細胞外小胞 (extracellular vesicles; EVs)の1種です。細胞外小胞には他にエクソソームや微小砲 (microvesicle) などがあり、これらは生きている細胞が分泌し、他の細胞などに作用するものです。ABsのサイズは1,000 – 5,000 nmであり、正常な血小板と同程度です。ちなみにエクソソームは~120 nm、微小砲は~1,000 nmです。ABsには、核酸やタンパク質、脂質などが含まれています。また、ABsは免疫調節やそれに関連した疾患などに関与していることも報告されています。そして、アポトーシス細胞が周りの細胞とどのようなコミュニケーションを行っているのか(例えば、早く処理してくれ、など)を研究する上でABsは非常に重要な因子となっています。

RANKLリバースシグナリング
通常、RANKLはRANKという受容体に結合する事で、受容体側、つまり破骨細胞前駆細胞内でシグナルが伝達され色々な反応が起こります。2018年の9月に、破骨細胞が分泌する細胞外小胞に存在するRANKが、骨芽細胞が細胞膜に発現しているRANKLに結合すると、RANKL側、つまり骨芽細胞側にシグナルが入るリバースシグナリングが活性化され骨形成が促進されるという論文がNature誌に発表されました (Ikebuchi Y, et al. Nature 561, 195-200, 2018)。

本論文で明らかになったこと
本論文では、破骨細胞のABsにRANKは発現しており、これが骨芽細胞のRANKLに結合することで、骨芽細胞分化が促進されることを明らかにしました。
破骨細胞がアポトーシスする際に、骨芽細胞に作用する何かしらの因子を出しているのではないか?とは昔からよく言われていたので、その一つが破骨細胞由来ABsだったというのは非常に面白いと思います。

結果

  1. アレンドロネートは破骨細胞由来ABsの生成を促進した。
    アレンドロネートはビスホスホネートと呼ばれる骨粗鬆症治療薬で、破骨細胞に取り込まれることで破骨細胞を殺す作用を持ちます。破骨細胞にアレンドロネートを与え、生成した細胞外小胞を調べたところ、ABsであり、アレンドロネートにより破骨細胞由来ABsを得ることに成功しました。
  2. ABsは骨芽細胞により取り込まれ、高い骨形成能を示した。
    ABsによってアルカリホスファターゼ活性 (骨芽細胞分化)、アリザリンレッド染色(石灰化)などが増加し、RUNX2など骨形成マーカーのmRNA発現・タンパク質発現が上昇しました。
    ※ちなみに、エクソソーム+マイクロベシクルによって、OC-ABsほどではないが、上昇していました。
    ※pOC-ABsとmOC-ABsでは、mOC-ABsの方が活性が強いです。
  3. mOC-ABs膜上のRANKを可溶性RANKLによりマスクすると、2.で示した各骨形成パラメーターが全て減弱した。
  4. mOC-ABsによる骨形成能の亢進にはRANKLリバースシグナリングが関与していた。
    RANKLリバースシグナリング:
    RANK-RANKL → PI3K → AKT → mTOR → S6K → Runx2 → 骨芽細胞分化 → 骨形成(石灰化)

感想・まとめ

本論文の概要図


 破骨細胞は、アポトーシスによってアポトーシス小体を生成します。アポトーシス小体の膜にはRANKが発現しており、骨芽細胞に発現するRANKLと結合する事で、骨芽細胞内にRANKLリバースシグナリングを伝達します。その結果、RUNX2など骨芽細胞分化に必要な転写因子が誘導され、骨形成を促進します。アポトーシス小体だけでなく破骨細胞由来の細胞外小胞や、成熟破骨細胞だけでなく、RANKL刺激された破骨細胞前駆細胞由来の細胞外小胞も同様の作用を示します


 破骨細胞がアポトーシスによって細胞死すると、破骨細胞由来の様々な因子が生み出されます。この際に、骨芽細胞に作用して骨形成を促す何かしらの因子はあるのではないか、と昔から話題にはなっていました。また近年、細胞外小胞についても非常に研究が進んでいます。それだけに、昨年の破骨細胞由来の細胞外小胞が骨芽細胞でRANKLリバースシグナリングを伝えるというのは非常に面白いと思いました。今回紹介した論文も含めて、これから骨芽細胞・破骨細胞のカップリング因子の研究が進みそうですね。

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