『宇宙生活における人工1G重力の骨量・筋量の維持効果』を4コマ漫画も交えてまとめていく。

筋骨格研究

ブログの方針改訂により、4コマ漫画を過去の記事にも随時追加していきます。
(2019. 07. 05)

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Development of new experimental platform ‘MARS’ -Multiple Artificial-gravity Research System- to elucidate the impacts of micro-partial gravity in mice | マウスを用いた微小重力の影響を評価するための新しい人工重力システムプラットフォーム ‘MARS’ の開発

重力と骨・筋の関連性については、何となくイメージできると思います。重力がなくなると骨や筋が減り、逆に重力がかかると骨や筋が増えます。

例えば、宇宙飛行士が地球に帰還した際に周りに抱きかかえられているのを見たことある人も多いと思います。これについては、三半規管など他の臓器が無重力に慣れてしまったため、急な地球重力 (1G) で一時的におかしくなってしまったためとも言われています。

ベッドに寝たきり、車イス、また骨折などによるギプス固定によっても、骨や筋は大きく減ります。スポーツ選手でもケガでしばらく入院などしていたら、筋肉がかなり減るので、リハビリなどで取り戻そうとします。

逆に重力が過剰にかかる、というのはどうでしょうか?こちらは筋肉トレーニングがまさにそうですね。ダンベル・バーベルを持つことで重力を過剰にかけて、筋肉を鍛え大きくします。
また、漫画・アニメ「ドラゴンボール」なんかもイメージつきやすいと思います。重力を発生させたトレーニング室で修業しているシーン、というのが何度も出てきました。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、国際宇宙ステーション(ISS)で生物学的実験を行なうための施設を持っており、定期的に公募しているようです。

本論文は、 2017年に行われたJAXAのミッションの成果であり、JAXA、岐阜大学の森田准教授、筑波大学の高橋教授、東京医科歯科大学の浅原教授らで構成された研究チームによって、新しい実験プラットフォーム「MARS (multiple artificial-gravity research system; 多機能人工重力研究システム)」の開発・評価が行われ、宇宙でマウスに1Gをかけることに成功しました。

論文を4コマ漫画でハイライト

第一回小動物飼育ミッション(MHU-1)

 2016年に第一回小動物飼育ミッションが行われました。筑波大学と大阪大学が中心となり、宇宙でマウスの35日間長期飼育を達成したとのことです。宇宙では、微小重力のために、前庭機能(バランス能力)や体液の流れ、筋骨格系などに異常をきたします。これら重力を感知する機構、すなわちなぜ重力が変化するとこのような異常が起こるのか?というのは未だ明らかになっていません。

 MHU-1ミッションでは、宇宙で遠心装置を用いることで1G負荷(地球上と同じ重力)を実現し、その影響を解析する事が可能となりました。また、飼育したマウスらは生きた状態で地球に帰還するため、世界初の宇宙出産マウスを得ることにも成功したようです。

飼育装置と宇宙で飼育中のマウスの状態

 宇宙上での遠心飼育用のマウスケージや宇宙飼育中のマウスの動画についてはJAXAホームページにて公開されています。→ こちら

 微小重力状態では、尾を使ってうまいことバランスをとったりしています。一方、人工重力下では、通常地球上での飼育と同様にしっかりケージ内を歩いています。

無重力および人工重力の骨・筋への影響

体重・食餌・飲水量の測定
 まずマウスの体重については、微小重力下では変化がない、または減る個体もいました。人工重力下では増加傾向が見られ、同様に地上コントロール(同じ期間、地球上で飼育したマウス)でも体重は増加しました。食餌量、飲水量についてはあまり変化はありません。

前庭機能の解析
地球帰還後に、空中立ち直り反射テスト(空中落下中に姿勢を直して四肢で着地する事)を行った結果、人工重力群と地上コントロール群は同程度だったが、微小重力で飼育したマウスにおいて、反応の遅延が見られた。つまり、微小重力下での飼育によって、自分がどっちに向いているのかなどを認識する機能に影響が出た、ということです。

協調運動の解析
地球帰還後に、モーターロッドを用いた協調運動力を試験しました。これは回るロッド(棒)上にマウスを乗せ、落ちずにどれくらい歩けるか、というものです。その結果、地上コントロール群に比べ、微小重力群・人工重力群ともに協調運動力が減少していました。

AG: 人工重力 MG: 微小重力 GC: 地上コントロール

筋・骨の解析
マイクロCT装置を用いて、マウスの大腿骨の骨量を測定したところ、微小重力群でおよそ10%程度の骨量減少が認められました。同様に、ヒラメ筋および腓腹筋(どちらもふくろはぎの筋肉)の量も微小重力群のみ減少していました。しかし、人工重力1G群では、どちらも地上コントロールと同程度に維持されていました。

左図の参照元 (open access 論文):
Fig. 4d; Shiba D, et al. Sci Rep 7, 10837, 2017.
https://www.nature.com/articles/s41598-017-10998-4

結論・感想

 本論文より、宇宙生活において1G加重をかけることで、骨量・筋量の減少を食い止めるということが明らかになりました。今回は、表現型を比べた結果だけで、なぜ宇宙だと骨や筋が減るのか?また、なぜ1G加重をかけると骨や筋が減らなくなるのか?ということは今後の課題となっています。

 宇宙実験は、国際的にはNASAでも行われており、いくつか論文も出ています。今回紹介したJAXAのプロジェクトとNASAの違いは?と言われると、JAXAの場合は地球上へ生存期間が可能ということです。つまり、NASAのプロジェクトの場合は、宇宙上で宇宙飛行士によってマウスの解剖などが行われます。

 私は、それぞれメリット・デメリットがあるかなと思います。

  • NASAのメリット:微小重力の影響を詳細に解析できます。
  • NASAのデメリット:サンプリングが宇宙飛行士の手で行われるため、細かい作業は(例えば筋肉や骨を一つ一つ分離するなど)は負荷という点です。
  • JAXAのメリット:地上で我々の手で行うため、筋肉や骨の分離、血清採取など細かい作業ができます。
  • JAXAのデメリット:地球への生存帰還の際に、重力がかかります。また帰還したマウスを回収するまでに2-3日かかるため、その間に地球の重力にさらされて、適応反応などが見られるかもしれません。

 宇宙実験は、そうそう機会がないので、是非色々なことを明らかにしてほしいです。
 続くミッションであるMHU-2、MHU-3についても報告がちらったあったりするので、そちらも今後まとめていきたいと思います。

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生命・健康科学者のモノローグ

コメント

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